〈TALK〉
出演:佐内正史
聞き手:永井祐介(Vacant)
2022年9月3日(土)
16:30開場/17:00開演
Vacant/Centre 1F
定員40名
¥2,500(小冊子付き)
写真家・佐内正史の写真集レーベル「対照」。対話を通じて、その独自の写真哲学と活動に迫る「解対照(カイタイショー)」が10年の時を経て、第二部を開催します。
来場者には’解体’の手がかりとなる、佐内の写真を掲載した小冊子「解対真照(カイタイシンショー)」を配布。その小冊子に沿って、近著『写真の体毛』の内容を中心に話を展開していきます。
「写真って暖かいなと思った、でも 人の暖かさじゃなくて、猫の毛の暖かさ 動物の暖かさなんだなと思った、言葉が無い、ご飯あげるだけでいいっていうか、ご飯の暖かさ、ページをめくると、写真の動きがでてきた、ロマンがある写真集ができた。写真を撮って、忘れる事ができる、撮って、プリントして、構成して、印刷して、忘れていく、穏やかさがある。穏やかな本になる 穏やかな本をめくっている、 電線に鳥が2羽とまってるのか、3羽とまっているのか、写真は、私の代わりに、曖昧を定着させていく。」
(www.sanaimasafumi.jp 「写真の体毛」ページより)
佐内正史(さない・まさふみ)
写真家。静岡生まれ。1997年、写真集『生きている』でデビュー。2003年、写真集『MAP』で木村伊兵衛写真賞を受賞。2008年に独自レーベル「対照」を立ち上げて写真集を発表しつづけている。曽我部恵一とのユニット「擬態屋」で、佐内の詩と曽我部の音合わせをしたサウンド作品『DORAYAKI』(2021年)をリリース。最新写真集『写真の体毛』を2022年6月6日に出版した。
www.sanaimasafumi.jp|www.instagram.com/sanaimasafumi
解体しよう
写真集レーベル「対照」から送り出される、佐内正史の写真たち。一体これは何なのか。佐内さん自身に問いかけ、対話を重ねていくことで、一見不可解だったその写真たちへの視界が段々とひらけていった。それだけ佐内さんと、彼が撮る写真は”密着”している。だからこそ、さらに「解体」する必要があった。
佐内さんの独特な言葉の質感も、本来表現しえないような生の感覚に対して忠実な、身体的な言葉ゆえなのだった。そういった言葉を重ねるのは、体力と気力を必要とする(あるいは聞き手も)。ただ彼は言葉にすることを諦めない。それは撮り続けること、そして写真集をつくりあげていくことに対する、意義や情熱ではなく、そこに不思議さを感じ続けているからなのかもしれない。その言葉が描き出す風景は、写真という媒体を利用した「自己表現」ではなく、写真でしかできない「世界の見方」の提示がある。
前回の「解対照」の終わりに「次の写真集が出るタイミングでまたやりましょう」と言っておきながら、あれから10年が経った。そのあいだにも佐内さんは写真を撮り続け、写真集を出し続けた。変わらぬところはそのままに、自分の世界の見方を更新し続けている。
10年前に「写真になりたい」と言っていた佐内さんはいま、自分は「写真家」ではなく、「写真」なんだと宣う。10年という歳月のなかで、なにがあったのだろう。言葉よりも”雄弁”な写真をたよりに、いまいちど解体にとりかかろう。
永井祐介(Vacant)