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EXHIBITION

"美しき影 / Tangible Shades"

園 / Hyoweon Baek


2024.6.29 sat - 7.21 sun 
at Vacant/Centre 
入場無料 | Admission Free
金土日のみオープン | Open Fri - Sun
営業時間 | Opening hours  13:00 - 18:00


人生は永遠につづく饗宴ではない。人生は涙の谷でもあり、バラの谷でもある。 涙を語るならバラを忘れてはならないし、バラを語るなら涙を忘れてはならない。 ―ジャン・ドルメッソン


韓国に生まれ、現在は日本と韓国を拠点に制作を行う白涍園(ベック・ヒョワン)による『美しき影』を開催します。今回4年ぶりとなる個展では、この世界に溢れる自然、または超自然的な美しさと、自身の内なる記憶をテーマに描かれた新作を展示します。


書画の筆先に、文字という記号を越えた風月が込められるように、彼女の引く線の交わりから生まれる、抽象と具象が混成する絵画からは、幾重もの風景の輪郭が浮かび上がります。その筆致は、美しさと切り離すことのできない「影」と向き合い、万物が両義的であることを顕そうとする試みでもあります。

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白涍園(ベック・ヒョワン)
1991年韓国・ソウル生まれ。2011年に来日し、武蔵野美術大学大学院造形研究科を卒業。現在は東京と韓国を拠点に活動。これまでの個展「BAROQUE」AL (東京, 2019)、「dialogue」AL(東京, 2017)。グループ展「Silent Resonance」Galerie Lulla(LA, 2023)、「The Organic Society of Lines and Colors Chapter 1」UNDER the PALMO(神奈川, 2020)など。




Life is not a perpetual feast, it is a valley of tears, but it is also a valley of roses. If you speak of tears, you must not forget the roses, and if you speak of roses, you must not forget the tears. ーJean d'Ormesson


Vacant will present Tangible Shades by Hyoweon Baek, born in South Korea and currently lives and works in Japan and South Korea. In her first solo exhibition in four years, the artist will present new works drawn on the theme of the natural or supernatural beauty that abounds in this world and her own inner memories.


Just like the tip of a brush in calligraphy can express the wind and moon beyond the symbols of letters, the paintings that emerge from the interplay of her lines, a mixture of abstract and figurative, reveal the contours of multiple landscapes. The brushwork is an attempt to confront the “shadow,” which is inseparable from beauty, and to reveal the ambivalence of all things.

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Hyoweon Baek
Born 1991 in Seoul, South Korea, she came to Japan in 2011 and graduated from the Musashino Art University. Currently based in Tokyo and South Korea. Previous solo exhibitions include 'BAROQUE' AL (Tokyo, 2019) and 'dialogue' AL (Tokyo, 2017). Group exhibitions include 'Silent Resonance' Galerie Lulla (LA, 2023) and 'The Organic Society of Lines and Colours Chapter 1' UNDER the PALMO (Kanagawa, 2020).

色彩、記憶と影


ベック・ヒョワン『美しき影』に並ぶ、色彩溢れた作品たち。その彩りは、作者であるベックの目に映っている、世界の豊かさのあらわれでもあります。日々音楽や自然の音に耳を傾け、文章と物語に伴走し、様々な美しい場所を訪れ、植物や動物を愛でる。彼女の大きく開かれた好奇心によって蓄積された記憶が、腕や指先から溢れて絵が描かれている。けれどその筆先には、言い知れぬ恐れや迷いも含まれていることを自覚して、その出所を探るために、今回彼女は自らの深みへと冒険に出掛けた。

抽象と具象の狭間、言葉にならない言葉、感情を超えた驚き、感覚の入り江ー。そして彼女の深くにあった記憶が渦巻く場所で、世界の景色はバラバラに分解されていった。かたちは光と影に分かれて色になり、色がまた交差すればかたちになって、立ち別れれば余白に沈む。そうして散り散りになった景色は、どれも彼女の深い場所と結びついている。だからこそ今回ベックが描いた一見すると抽象的な色とかたちには、幻影/イメージの強度がある。

彼女が冒険から持ち帰った戦利品は、相変わらず記憶だった。けれどそれは愛や哀しみ、心地よさと痛みが切り分けられる以前の、世界丸ごとの記憶の欠片だった。無垢な美しさを湛えた、世界の影(シルエット)としての。



 


見えない川の流れ


生き物は周囲の世界を連続的な映像として見ている。つまり眼が捉えたイメージを、脳が1コマずつつなぎ合わせることで、世界を認識している。たとえ目の前が静けさに満ちた景色であっても、それは1コマ1コマが瞬間的に切り変わっている無数のイメージの集積なのだ。


ポストカードサイズの紙に描かれたベックの絵は、彼女の脳裡をかすめていく、その無数のイメージのひとつを捉えたものだと言える。今回展示されている、他のより大きなサイズの作品に多くの瞬間的イメージが織り込まれているとすれば、このポストカードサイズの作品には、イメージの最小単位ー純然たる1コマの瞬間ーが描かれている。



この作品を眺めるときの心地よさは、川の流れに乗った笹舟を眺めているときのようだ。あなたのなかに在る無数のイメージの奔流にポツンと浮かび、たゆたう船を目で追いながら、ほんのひととき川の流れを体感する。普段は気付くことのない、その川の速さや大きさ、もしかすると水の透け具合いまで、この作品を通して感じることが出来るかもしれない。




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