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EXHIBITION

"を拓く/The Basis"

大橋和彰(大橋左官) / Kazuaki Ohashi (Ohashi Sakan)


2024.8.9 fri - 9.1 sun 
at Vacant/Centre 
入場無料 | Admission Free
金土日のみオープン | Open Fri - Sun
営業時間 | Opening hours  13:00 - 18:00

国土の三分の二を森林が占める日本列島の風土が、木造建築の伝統を育み、その歴史とともに土壁は生まれ、左官の技術は磨かれてきた。いわば我々が 住処をつくる営みの原風景として左官はある。


Vacant/Centreの建物の左官を手掛けた大橋和彰は、「自らの生活を豊かにする」ための技術として左官を見出したという。伝統技術への回帰ではなく、日々土や石に触れながら原始的感覚を手繰り寄せ、より本質的に活き生きと過ごすための坧(どだい)を整えるべく、その手を動かし続けています。


本展では、大橋が大橋左官として数々の施工現場に関わりながら、その技術と自由な発想で個人的に創作してきた物物たちを並べると共に、左官の持つ魅力を立体的に展開し、人の生活の原像に想いを馳せる場の実現を目指します。

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大橋和彰(大橋左官)
1983年東京都生まれ。2005年に「原田左官工業所」で左官の修行をスタートさせ、2015年に「大橋左官」を設立して以来、内装をはじめとして、ワークショップや展示など幅広く活動している。


The climate of the Japanese archipelago, where forests cover two-thirds of the land, has fostered a tradition of wooden architecture, and with that history, earthen walls were born and plastering techniques were refined. In a way, plasterer exists as part of the original landscape of our activities to create a dwelling place.


Kazuaki Ohashi, who worked on the plastering of the Vacant/Centre building, says that he discovered plastering as a technique in order to ‘enrich one's life’. Rather than a return to traditional techniques, he continues to move his hands in order to bring back primitive sensations by touching clay and stone every day, and to prepare the basis for living more essentially and vividly.


In this exhibition, we will be displaying the objects that he has created personally using his skills and free-flowing ideas while being involved in numerous construction sites as a plasterer. We aim to create a space that evokes the origins of human life by developing the appeal of plastering from multiple perspectives.

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Kazuaki Ohashi (Ohashi Sakan)
Born in Tokyo in 1983. He started his training as a plasterer at Harada Plastering in 2005, and since establishing Ohashi Plastering in 2015, he has been active in a wide range of fields, including interior design, workshops and exhibitions.


 


 

未来から掘り起こす


Vacant/Centreのオープン時に⁡"Future Archaeology(未来の考古学)"と題してこんなことを書いた。


「左官職人である大橋さんが居なければ、Centreの空間はまた違った様相になっていた筈だ。素材の探求、仕上がりの追求、止まない好奇心。つくるという行為の「全体性」のなかに漂う彼の思考に、単なる感覚的な近さを超えて、色や質感、流れる空気を含んだひとつの風景を共有したような、清々しい気持ちにさせられる。


大橋さんによってつくられた床や壁が、日常的でありながら特別な佇まいがあるのは、自然との繋がりに根ざした技術への敬意があるから。左官が太古の昔といまをつなぐ装置であり、未来の在り方のひとつを示す表現だということを、今回の協同作業で学ばせてもらった。またあれやこれやの山々話をしながら、共に思索に耽りましょう。」


大橋さんとの対話を経て出来上がった床や壁は、自分が当初想像したものとは違っていながらも、どんなものより自分の理想に近かった。大橋さんに先導され、自ら描いた空想の空間の先へと潜っていった、その足取りを追うような気持ちで、今回の展示を企画した。この場所が出来上がってから3年弱という「未来」から、制作していたあの時間と感覚を掘り起こす。またこの「今」をいつか掘り起こすことになるだろうと予感しながら、スコップやコテを使って、自分なりの考古学に勤しむとしよう。


 

土と石


「土」に「石」と書いて、「坧/どだい」と読む。普段は使われることのない漢字だけれど、確かにそうだと腑に落ちる。自分たちが日々生きていくのに文字通り「土台」として足元を固めてくれているのは土と石である。


もともと土という漢字は「土の神を祭る為に柱状に固めた土」の形から出来ていて、石という漢字は「険しい崖のそばに、神へ捧げる祈りの言葉を入れる器を置いた様子で、神が宿る場所」をあらわしている。(『常用字解』白川 静)


当たり前のようにある土や石に霊性を感じ、神の存在をそこに認める。土や石という文字を書くときでも、我々は知らず知らずのうちに人間古来の感覚に寄り添っているのかもしれない。そんな土と石に日々向き合い、その素材の可能性を、そして人間の可能性を、左官を通じて探求する大橋さんの日々の営みを、ひとときVacantに映します。


 

〈なか〉と〈そと〉の自然


今回大橋さんが持つ左官技術のもと、自由な発想で生まれてきた作品や、自作の道具に囲まれた空間のなかで、時間を過ごし感じたのは、人が育んできた技術や道具は、その人の「内側にある自然」を引き出すためにあるのではないかということ。


途方もなく長い時間をかけて、自然のなかから生み出されてきた人類は、いつだって自然に学び、自然に抗ってきた。それは皮膚という境界線を隔てた、自分たちのなかに住まう自然を見つめ、その摂理を発見し更新していく営みなのだろう。


現代の日々のなかでは、ふと自然との対話を疎かにしてしまうことがある。そんな時に、人間がずっと温めてきた技術と道具を用いて、〈なか〉と〈そと〉の自然をつないでいく。土や石が転がる足元から、世界の無限の広がりを生きる「自由」を拓いていく。その清々しい道筋を、大橋さんに見せてもらったように思う。



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