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"パイロン"


 

解対照〈第一部〉(2012.04.01) アーカイブ#2

「パイロン」


永井祐介(以下、永)

次のページに行きます。新宿のパークハイアット東京から撮影したビルの写真ですね。これは僕が気になったので、入れていただきました。

この写真を見た時に、佐内さんの変化を感じたんですね。ビルが真ん中にあって、「このビルを見てる」というのがわかりやすい。その前までの佐内さんの写真は割と、その写真のどこを見てるのか、わからないものが多かったので、大きな変化だと感じました。


佐内正史(以下、佐)

対象物にもよるんですけど、「写真を真ん中でパシっと撮ろう」というタイミングがあると思うんですね。これはパークハイアット東京のラウンジから撮ってるんですけど、そこが以前は俺にとって落ち着かない場所だったのですが、気づいたら落ち着いて過ごせるようになっていて、だから、真ん中で撮れた。そんなことは他のホテルでは起こらなかっただろうと思います。


(永)「なじむ」ということと、「真ん中で捉える」ことには繋がりがありそうですね。


(佐)自分がまっすぐ、そらさないで撮れること。それは意識して撮ってるわけじゃなくて、自分が消えちゃうような感覚で撮れるっていう意味です。そうすると、真ん中で撮れる。自分がいないような感じで。


(永) そういうものと、写真集の題名の『パイロン』が重なるように感じます。「パイロン」は工事現場などに立っている、三角コーンのことですよね。


(佐)そうです。


(永)パイロンは目印みたいなものですよね。センターに写っているビルも目印っぽいというか、そこが通じるような気がします。この前のトークイベントでは「『パイロン』という写真集のタイトルは、友達が決めた」と仰っていました。


(佐)うん。自分は友達の言葉をスナップしたっていう。


(永)「『パイロン』っていう言葉を友達が言って、 それを俺がタイトルとして選ぶのは写真的なことだよね」というお話が印象的だったんです。

「別に国語的な意味で選んでいるわけではなく、 友達が言ったからいいなと思って、それを選ぶという行為が、写真を撮るのと同じ感覚だ」と。


(佐)そうですね。この間「パイロンがあんまり映ってないんですけど、 どうして『パイロン』なんですか?」って、質問されたんですよ。


(永)『パイロン』というタイトルだからといって、パイロンというもの自体を扱っているわけじゃないということですよね。


(佐)単純に言うと、そうです。三角コーンって丸みがありながらも尖っていますよね。歩いていると、道端にポンと置いてある。それを「パイロン」という言い方にした方がキリッとしている。写真集をめくって閉じた時の印象がなんとなく似てるんじゃないかっていう感じがあったんですよ。


(永)タイトルはどの時点で決めたんですか?写真集の見本ができた段階でしょうか?


(佐) まだ見本ができる前の、写真を全部セレクトし終わった時に決めました。言葉のセンスが優れている友達と色々話していて、その時に「パイロンかな」って言った、その人の言葉を撮るっていう。1番最初に話したように、偶然が1番強いと思っているし、そこも写真だと思うので。



続く/To Be Continued

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