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「存在」とは、視覚的にどのような質感なのだろうか。

 

札幌出身、現在東京を拠点に制作を行う牧口英樹は、2009年のとある日を境に、この世界に潜む数々の「場所」を撮り始めました。空間という存在そのものに焦点を当てたその写真には、被写体という形あるものを超えた何かの気配が、たしかに写っています。

 

東京のVacant/Centreでの展覧会にあわせて刊行された、作家初となる写真作品集『場所 A Place』には、14年間のあいだに世界各地で撮影された写真を43+1点を掲載。編集・デザインはVacant主宰の永井祐介、Vacantとしては8年ぶりとなるオリジナル書籍になります。

 

牧口 英樹 Hideki Makiguchi

1985年北海道、札幌生まれ。2009年多摩美術大学卒業、2011年東京藝術大学大学院美術研究科先端芸術表現専攻修士課程修了。これまでの個展に、「Back is always the void」Vacant(東京、2010)、「ありふれた場所の、静かで限りなく無に近い、目に見えない何か」LIQUIDROOM(東京、2012)等。http://hidekimakiguchi.com

 

展覧会情報/Exhibition Info: https://www.vacant.vc/event/aplace

 

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書店でのお取り扱いについてはinfo@vacant.vcまでご連絡ください。
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場所 A Place

¥6,000価格
  • Title: 場所 A Place

    Author: 牧口英樹/Hideki Makiguchi

     

    Published Date: 2023.08.25

    Price: ¥6,000+TAX

    First edition published, 500 copies (初版500部)

    【送料無料】

     

    Editing&Design: Yusuke Nagai (Vacant)

    Printing: Hakkou Bijyutsu

     

    254 x 201mm / 88 page / 44 photographs

    Hardcover / PUR Binding

    Published by Vacant

    ISBN978-4-908177-03-3

  • 写真が「真を写す」ものとして、その力を宿していた時代の遺物である〈心霊写真〉の、「見えないはずのものが写っている」という恐怖の眼差しに対して、彼の『場所』という写真作品群からは「何も写っていないこと」に、静かな戦慄を覚える。そこに「何か」が写っていると思わずにはいられないのだ。写真にある景色は至って静かなのに、その衝動は耳鳴りのように、どこからか鳴り響いて、この身体を震わせる。

     

    「この世は空っぽではない。有るという奇妙な性質で満たされている。その根本的な事実を、場所と向かい合うことで思い出すことができる。」

     

    牧口がこのように示唆する「有るという奇妙な性質」とは、おそらく彼の向き合ってきた「存在」の一端であり、僕に「何か」を予感させる源だ。写っているようで写っていない、写っていないようで写っている。曖昧な認識を行ったり来たりするしかない程に、彼が捉えようとしている「存在」は不確かに揺らぐ。写真の側に立ち、ゆっくりと眺めることで、うまくいけばステレオグラム画像に立体物が浮き上がってくるように、ふと何かに触れる瞬間が来るかもしれない。そんな淡い期待ができる場所を、牧口の写真は用意してくれる。

     

    ひとたび意識を少しでも逸らしてしまえば、途端に見えなくなってしまうような儚い存在に対して、牧口が長年に渡って集中力を途切らせることなく、ずっと目を凝らし続けてきたことに、僕は単純に感嘆する。だからこそ、彼のストイックな生き方そのもののような探究の成果を、「作品」として扱うことにも慎重にならざるを得ない。今回出版する写真集も、10年越しの構想を経てようやくつくることが出来た。彼が世界中で見出してきた数々の「場所」を収めた本書は、それぞれの人のなかにある、未知なる領域を浮かび上がらせる、テキストのない哲学書であり、正解のない問題集だ。展覧会のスタート直前に刷り上がってくるこの本を、ひとりでも多くの人に見てもらいたいと願っている。

     

    永井祐介(Vacant)

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