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Works

Vacant/Centre

Project: Interior Design  |  Client: -  |  Item: Multicultural Complex  |  Year: 2021

#space, #interior

Vacant/Centreは永井祐介が運営するVacantの拠点であり、ギャラリー、アトリエ、シェアスタジオ、レジデンス、ダイニング、ライブラリーを擁する複合施設である。2009年から2019年のあいだ、原宿にあった以前のスペースでジャンルを横断した数百の文化的イベントを行って培ってきた経験を活かして、理想とする環境を計画し、本施設のデザインを自ら行った。


細長く縦に伸びる土地に、共に築50年以上の5フロアのビルと2フロアの日本家屋という雰囲気の異なる建物が隣り合うユニークなポテンシャルを活かしながら、様々な文化コンテンツを扱える施設として全体の改装を行った。各フロアに機能を割り振りながら、動線を入念に検討することで、空間同士の関係性を整え、建物全体がポリフォニックに響き合うよう努めた。例えばアーティスト・イン・レジデンスのプログラムであれば、アーティストはレジデンスに滞在しながら、アトリエで制作を行い、特別な夕食会をダイニングで開催し、ギャラリーで展示を行うといったような取り組みが可能になる。


この施設の軸となる1階のギャラリースペースは、既存の半地下の構造を活かして、正面にあった壁を全開口型の引き戸に代え、建物前面に新設したプランターから、内部の壁と床までを、色やテクスチャを入念に協議したうえで、左官職人に仕上げてもらい、まるで街の中にぽっかり開いた洞窟に潜り込むような体験を生み出した。空間の内外を緩く仕切るファサードに引いた天然染めのカーテンは、日光や雨風に晒されて日々変化していく、この建物に宿した「クラフト」の精神を象徴するものでもある。


既製パーツの使用を極力避け、天井照明のカバーやドアノブなどを自作し、ビンテージの扉や無垢の素材を積極的に用いた。他にも随所に職人との共同作業で作り上げた箇所があるが、それらの細部がある一方で、固定の什器は最低限に抑えることで、人それぞれが場をイノベートし続けられるような余白を持った空間づくりを目指した。


スクラップ&ビルドが繰り返される東京の都市は効率性が重視され、街の景観は貧しくなり、そこに住む人々が本来持っているクリエイティビティが損なわれている。人間らしい営みを根底から支える文化の大切さを共有し、同時に自然の声に耳を傾けること。これみよがしなエコ的なデザインよりも、人の内側に如何にして美的感覚の根を下ろすかということが重要ではないだろうか。ひとりひとりの日々の小さな変化から、さざ波を起こしていくために、ゆっくりとこの場所を育てていこうと思う。

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In The Making Of Vacant/Centre



Coming soon.

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